技術実証レポート | Takeit2MODE(テキトーモード)合同会社
R&D REPORT

植物発電を想定した「\(100\mu\text{W}\)クラス自律駆動型IoTノード」の間欠通信実証に成功

Published: June 2026 | テキトーモード合同会社 開発チーム

テキトーモード開発チームです。当社では、「地続きの技術体験」を形にするアプローチの一環として、植物が排出する糖類を微生物が分解する際のエネルギーを電力に変える「植物発電(土壌微生物燃料電池)」を用いた、完全自律駆動型IoTデバイスの研究開発を行っています。

この度、実際の植物発電環境(低電圧・高内部抵抗)をシミュレートした過酷な電源制約下において、独自開発の間欠制御アルゴリズムとパワーマネジメント最適化を用い、外部電源に依存しない定周期のデータ無線通信実証テストにおいて極めて良好な結果を得られましたので、その技術要諦を公開いたします。

01

実証実験の概要と「電力収支の完全黒字化」

本実験では、大自然の過酷な環境変化を想定し、入力電圧 \(0.5\text{V}\) 未満、さらに数百\(\Omega\)相当の擬似内部抵抗要素を直列に配置した「極めて細いストローでしかエネルギーを吸い上げられない環境」を構築しました。通常、一般的なマイクロコントローラや無線モジュールを起動することすら不可能な極小電力環境ですが、システム全体の定常消費電力をわずか \(100\mu\text{W}\)(マイクロワット)クラスにまで徹底的に抑制。この微小パワーのみを原資として、以下の挙動を完全に自律巡航させることに成功しました。

定周期間欠通信

正確な6分(360秒)サイクルで環境センサー(土壌水分値)のサンプリングおよび920MHz帯特定小電力無線(LoRa)による長距離データ送信を維持。

自己起動

蓄電部が完全に放電した状態(\(0\text{V}\))からスタートした場合でも、周囲の微小環境エネルギーのチャージを開始して約10分でシステムが自動起床し、初回の送信を開始。

高速リカバリ

無線バースト送信時に一時的に大きなエネルギーを消費しますが、その後約4分間で次回送信に必要な基準電圧(約\(3.9\text{V}\))まで完全復帰。

03

実装のメカニズム(パワーフロー・アーキテクチャ)

この極小電力での駆動を支えるコア技術は、独自の「エネルギーマネジメント・バケツリレー」にあります。競合他社によるリバースエンジニアリング防止(ノウハウ防衛)のため、具体的な回路定数やデバイスの型番はブラックボックス化していますが、そのロジカルな制御フローは以下の通りです。

大自然・植物由来の微弱な環境エネルギー

\(0.5\text{V}\) 未満の超低電圧バースト電流として流入。

超低消費電力・環境発電用エナジーハーベスタ

MPPT(最大電力点追従)制御により、常に「一番効率の良い入力電圧」に自動ホールドし、高効率に昇圧。

最適化設計されたカスタム蓄電部(キャパシタ群)

一瞬の無線爆射に必要なエネルギーを、時間を味方につけてじわじわ蓄積。

独自の間欠動作プログラムを実装したマイクロコントローラ

ミリ秒単位の超高速サンプリングを行い、送信直後に深遠なスリープモードへ自動移行。

920MHz帯 特定小電力無線(LoRa子機)

パケットデータを送信 ➔ 常時起動の受信親機を経て、PC側のリアルタイムモニター画面(TeraTerm)へ正確に追従。

03

技術的考察:なぜ、この数値が「おぉ!」と言えるのか

電子回路に詳しい方であれば、直列に数百\(\Omega\)の抵抗を挟んだ \(0.5\text{V}\) の電源から引き出せる電流がどれほど絶望的か、お分かりいただけるかと思います。

MPPT制御により、入力電圧を開放電圧の約80%である \(0.4\text{V}\) 付近にがっちりとクランプして最大電力を引き出した際、回路を流れる実効電流 \(I_{in}\) はオームの法則により以下のように制限されます。

MATH
$$I_{in} = \frac{V_{oc} – V_{mppt}}{R_{int}} \approx \mathbf{0.2\text{mA}}$$

この時、システムが自然界から得ている総パワーは、わずか \(0.1\text{mW}\)(\(100\mu\text{W}\)) です。この消え入りそうなエネルギーの灯火を、キャパシタの充放電時定数とマイコンの超高速起動制御によって完全にコントロールし、数万倍の瞬間消費電力を必要とするLoRa無線のバースト送信へと昇華させています。

04

Future Outlook(これからの展開)

今回のシミュレーションフェーズが「完全合格」のクオリティで完了したことにより、私たちは次のリアルフィールド(大自然)の実証実験へとステージを移します。一般的な植物発電の実効出力特性は、今回の模擬環境よりも高い \(1.0\text{V}\)、\(0.1\text{mA}\) 前後と言われています。この本番環境への移行は、システムにとってさらなる「電力の大黒字」を意味します。

昇圧変換効率の劇的向上

低すぎる入力電圧(\(0.5\text{V}\)以下)からの昇圧はICの内部損失が大きくなりますが、\(1.0\text{V}\)近くまで元電圧が上がれば、エナジーハーベスタの変換効率は80%〜85%付近の最高効率エリアへと跳ね上がります。

電極の限界ダウンサイジング

電力が有り余るようになるため、最も容積を必要とする「電極の表面積」を現在の半分以下(引き出し電流 \(50\mu\text{A}\) 狙い)まで攻めて小さくし、システム全体の劇的な小型軽量化・低コスト化を狙うことができます。

運用のプラットフォーム化

今回は6分周期での生存を証明しましたが、実際のスマート農業で実用的な「30分〜1時間周期」へのスリープ調整を行うことで、曇天や冬場などの植物・微生物の活動低下(大飢餓モード)をも完全にカバーする、メンテナンスフリーの「永久自律駆動ノード」を構築可能です。

アナログの自然現象から、デジタルの未来データへ。

テキトーモードの次世代IoTプロジェクトに、どうぞご期待ください。

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